第二章 独白

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沖田総司です。 笠を被っていたとは言えども、俺は以前、彼に顔を見られています。 見つかったかと焦り、笠を深々と被りました。 しかし、前方から向かってくるときも、まさにすれ違うときも、沖田は俺を見ませんでした。 いえ、何処も見ていませんでした。 すれ違うとき、沖田が彼女の名を呟いていたのが判りました。 彼女は沖田と仲が良かったそうなので、彼の表情がああだったのも合点がいきます。 彼女は恐らく、何らかの形で沖田に別れを告げていたのでしょう。 彼の顔は悲しさで歪んでいました。 その表情に胸が痛くなったのは事実ですが、俺はそのまますれ違って桂先生の元に向かいました。
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