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桂先生は俺が来て驚かれていました。
しかし、俺の切羽詰まった様子を見て何か感じ取ってくださったのか、人払いをしてくださいました。
桂先生に文を渡し、先生が読み終えられるまで息を殺して待ちました。
読み終えた桂先生は呟きました。
馬鹿者が、と。
桂先生と先生は馬が合わぬのか、言い争うことは多々ありました。
でも、今のような桂先生は初めて見たのです。
辛そうだと言うべきか、怒っていると言うべきか。
桂先生は、様々な感情をない交ぜにしたような顔をされていました。
やがて文を懐にしまって、俺に言いました。
手伝ってほしいことがある、と。
桂先生は俺を見て察したようで、苦笑いされておられました。
すぐに終わるから案ずるな。
そう言われてしまいました。
俺は素直に承諾しました。
このとき気付けば良かったのかもしれません。
俺もまた、先生に“騙し討ち”をされたのです。
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