第二章 独白

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桂先生は俺が来て驚かれていました。 しかし、俺の切羽詰まった様子を見て何か感じ取ってくださったのか、人払いをしてくださいました。 桂先生に文を渡し、先生が読み終えられるまで息を殺して待ちました。 読み終えた桂先生は呟きました。 馬鹿者が、と。 桂先生と先生は馬が合わぬのか、言い争うことは多々ありました。 でも、今のような桂先生は初めて見たのです。 辛そうだと言うべきか、怒っていると言うべきか。 桂先生は、様々な感情をない交ぜにしたような顔をされていました。 やがて文を懐にしまって、俺に言いました。 手伝ってほしいことがある、と。 桂先生は俺を見て察したようで、苦笑いされておられました。 すぐに終わるから案ずるな。 そう言われてしまいました。 俺は素直に承諾しました。 このとき気付けば良かったのかもしれません。 俺もまた、先生に“騙し討ち”をされたのです。
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