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それ以上、大和田は何も聞けなかった。
聞くな、という無言の圧力があった。
真理亜は何喰わぬ顔で世間話へ戻す。
二人の間でその話が出ることはなかった。
しばらくすると大和田は壁の時計を見た。
立ち上がり、
「そろそろ帰るよ。終電が無くなっちゃうから」
「うん、じゃあ月曜ね」
「嗚呼。真理亜、文献のこと忘れるなよ」
「解ってるって」
大和田は笑って手を振り、帰っていった。
真理亜も笑顔で玄関から見送る。
ドアが閉められた後、背中を伸ばしながらリビングへと戻った。
缶を次々とゴミ袋に突っ込みつつも、真理亜の思考が巡った。
【あの仕事を失敗したことに後悔が無いのは本当。だけど…】
あいつを死なせたことの後悔は残っている。
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