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「う…そ……」
涙が滲んだ。
その時代には珍しく、“今”の真理亜にも読めるような字で書かれていた。
まるで将来読まれることを意識したかのような、一字一字はっきりとした本。
本の著者の名は、
「豊春君…ッ」
前書きには、こう書かれていた。
『これから記すことを世迷い言だと思うか戯れ言だと思うか、はたまた真実だと思うか。それは読むあなたに任せます。私は或る人に伝える為だけに、筆をとったのですから』
根拠は無かったが、豊春の言う“或る人”は自分だと解った。
真理亜は目元を拭った。
【豊春君…。あたしに伝えたかったことって?】
問い掛けながら、真理亜は頁を捲った。
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