第1話プロローグ

11/27
前へ
/611ページ
次へ
  マルスが一通り話終えて黙り込み、自然と二人は沈黙した。 ディダは手を止め、マルスを見てから別の方向に向き、頭を掻きむしり、 「あぁ……なんつーか、誰だって欠陥位あるし、変に恐れられたり襲われたりする。 でもなぁ、生きてて良いんだぜ、誰だって生き抜く権利があって、死ぬ権利なんてないんだからな」 考えながらマルスに言う。 マルスが言いたい事は何なのかは分からない。 だけど、生きていて良いのか分からないのだと分かる。 ディダは模索しながらも一つ一つ言葉を選び抜き、そっとマルスの頭を撫でて上げた。 「……」 マルスは驚いた表情になり 「な、なんだよ! な、撫でても良いだろが!」 ディダは何故か真っ赤な顔になり、怒鳴った。 どう見ても照れ隠しに見える。 「何でもない、ありがとう」 マルスから笑みがこぼれ、布団に潜ってすぐ眠ってしまった。 「だから、自分の部屋で寝ろよ……」 ディダはマルスが寝ているのに気付いたが、そのままにしておくことにした。 なんとなくだが、一人で寝たくなかったのだろう。 そう思い、ディダはまた筆を振るわした。 そこから一週間経つか経たないかの時、アダムがやって来た。 アダムはディダにマルスを任せといて良いのか、かなり心配だった。 しかし、一気に心配が吹き飛んだ。 「ディダ、はい!」 「おぅ、ありがとよ」 二人仲良く洗濯物を干していて、まるで親子のように見える。 「なんだ、心配しなくても良かったな」 ホッとしてディダに言う。 「ご心配しなく、だったら来んなよジジィが……」 聞こえないようにディダはボソッと嫌味を言うも、小声が聞こえたようで、 「なんか言ったか?」 アダムは、ディダの髪の毛の結んである束を軽くクイッと引っ張った。 「いや別に……ぃ!」 ディダはビックっとなり、何も言い訳も出来ない。 ディダにとってはかなり鳥肌もので、まさに力が抜ける感覚であり、弱点のようだ。  
/611ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2671人が本棚に入れています
本棚に追加