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人はどうして手を出しては破滅へと運ぶのか、人はどうして傷つけ合うのだろうか。
考えても憤りを覚えては、呆れ果てる。
そんな気持ちになってか、話が途切れてしまった。
するとマルスが、
「バンパイア狩りが何?」
話を元に戻し、アダムはすぐに、
「そうだったな、ある神父が言っていたのだ。
『一人だけ、取り残してしまった。
だが、その者はバンパイアには珍しい者があった。
上手くいけば全てを滅ぼせる』 とな……。
まったく、何が言いたいのか呆れ返るばかりだ」
アダムにとってはもう日常茶飯事であり、他の神父がかなり面倒な事ばかり起こしては結局自分達に降り掛かって来る。
自分でやった事は自分で何とか貰いたいと願っては、儚く散るばかりだ。
「一人だけって……殺すの?」
マルスの怯えきった顔をしている。
無理は無いだろう。
こんな小さな子供の前で、酷い話をしているのだ。
怯えていても仕方がない。
「で、俺にどうしろと?」
ディダはふんずり返る。
何かを悟ったらしく、アダムも、
「もしで構わない、その者を見付け次第……」
真剣に本題を話そうとした時だ。
ガシャン。
何かが落ちた。
「……! びっくりしたぁ、マルス何やってんだ……?」
ディダは驚き、急に心臓の動悸が悪化したみたいに胸を抑えマルスに近づく。
「ご、ごめんなさい! す、すぐに!」
「良いよ、木の器だったから良かったが、気を付けろよ」
「う、うん……」
途方にくれるマルスを見て、
「さっきの話は気にするな、俺はお前の味方だからな」
そう言ってディダはマルスの頭を撫でた。
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