第1話プロローグ

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  「……?」 アダムは不思議と疑問な顔へと変わるも、 「冗談だよ」 ディダはクスリと笑い、酒を注いだ。 自然と沈黙が続く、アダムと酒を一緒に飲むいつもの事だ。 仕事以外の平凡な話なんてほとんどない。 逆に一人で酒を飲んでる方が、いくらかましかも知れないほど。 何を話すかなんて、気まずい雰囲気が流れる事は不思議とない。 もう慣れたのだろう、そんな気分になった時だ。 「相変わらずお前に無理させてるな……。 お前はただ守りたいだけなのに……」 急にしんみりするアダムに対してディダは、 「もう慣れた、あんたらに会う前からな」 酒を飲みながら、当たり前の様に平然として見せた。 “あの頃”そう、アダムはそれなりに自分を見て心配しているのだとディダは知っていた。 知っていたからこそ、微妙に気まずい関係とも言える。 また長い沈黙が続く。 そんな時だ。 『お前の命なんだから、他人に人生を決め付けられる必要性は無いんだから、自由にやれば良いんだ』 ディダの脳裏から誰かに言われた言葉が蘇り、ディダはある事を思い付き立ち上がる。 「ディダ?」 アダムはディダ見た。 「そろそろ、‘アレ’の手入れしないと、思ってな、マルスを連れて行こうと思う」 顔をポリポリ掻き、アダムから目を背けた。 「もう、ダメにしたのか?」 わざとらしく驚く顔。 アダムも分かったらしい。 ディダの言葉に……。 「そんなんじゃねぇよ」 そう言ってディダは何処かへと歩き出した。 マルスは目を覚ましていたと言うより、寝たフリだ。  
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