第1話プロローグ

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  太陽がまだ昇らず、山々から光が差す時間。 ディダはマルスを起こしに部屋に入り、 「マルス、おはよう。 朝早いが……!」 毛布を外した瞬間、絶句した。 マルスがいない。 部屋や他の場所をくまなく探したが、何処にもいない。 テーブルの上に紙切れがあるのに気付き、目を通す。 『ディダへ。 これ以上迷惑掛けられません。 ごめんなさい マルス』 「あの……バカ!」 ディダは外に出て、耳を済ませる。 微かだが、遠くの方でマルスの声が聞こえた。 「やだ! 来るな!」 マルスの声が悲鳴に近い。 そして……。 「絶対殺すな! 怪我をさせても良い、コイツはこれからの仕事に役立つからな」 何がマルスを追いかけている。 ディダの顔が険しくなり、鼻を犬のようにクンクンさせ、 「ヤバイな……西北辺りか……」 位置を確認したように、その場からディダの姿が消えた。 マルスは必死に逃げていた。 「なんで……なんで!? いるんだよ、この辺りはアイツ等が入れない程の険しい山道なのに……」 息を切らしながら、振り向く。 まだアイツ等が追ってきた。 「……!!」 すぐ横の木に矢が刺さり、更に次々と矢が降り注ぐ。 早くこの場から逃げなければ、間違いなく殺される。 「うわっ!」 岩の苔で足を滑らせ、転けてしまった。 早く早くと己を急かす内に、立ち上がる事さえ忘れもがくも、矢はマルスの服を貫通させ、マルスは慌て抜こうとするが深く入っていて取れそうもない。  
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