第1話プロローグ

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  だが……。 何かの音が聴こえた瞬間、ディダが倒れた。 「ディダ……? どうしたのディダ!!!?」 ディダの腕でを外し、マルスはディダを揺さぶったが起きない。 「真面目に嘗めた事をしおって……。 これはな、ちょっと知り合いから譲り受けた銃だが、かなり効果テキメンだったようだな」 男は銃を片手に持つも、手はガタガタ震えていた。 初めて撃ったと見える。 「さ、さ、さぁ早くこのガキを連れて行かねば……。 お前達、何処で伸びているか知らないが早くガキを!」 男は緊張冷め遣らぬ状態のまま、マルスに近付いて来る。 「来ないで!」 マルスの言葉と反して男は、 「五月蝿い! 頭を撃たれたのだ、もうその者は死んでいる!」 銃を自分のこめかみに撃つような動作をして、説明しながら近づいてきた。 「う、嘘だ!!」 マルスは震えが止まらず、ディダの腕を掴む。 「早く……来い! このガキが!」 男はマルスの腕を掴み無理矢理ディダから引き離す。 「嫌だ! ディダ、ディダ!」 「五月蝿いわ!! もう一度、血を垂らすぞ!!!!」 マルスは男の手から逃れようともがくと、男は小刀にまだ血の付いた刃先で脅す。 「おいおい、コッチが伸びていたら、なんて物言いなんだ、神父様が?」 男はびっくりしてディダの方を向くと、 「イテテ……飛び道具とは恐れ入ったわ」 ディダは撃たれた箇所を痛々そうに押さえ、立ち上がったではないか。 男は呆然と立ち尽くす。 確かに撃った。 人や動物の頭を撃てば大抵は死ぬ。 いや、もしかしたらまだ動けるだけでもうじき死ぬに違いない。 そんなどうしよもない考えがポンと浮かんだ時、 「ディダ!」 マルスは男の手を振り払いディダの元へ走った。 「待て!」 男は無意識にマルスに銃を向けた。  
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