第1話プロローグ

8/27
前へ
/611ページ
次へ
  「たくっ……コイツは……! そうだ! 坊や、名前はなんて言うんだい?」 たん瘤が出来、伸びたディダをほっといて、アダムは優しく子供の名前を聞く。 万が一、ディダの言う通り本当だったら困り兼ねないが、自分の知り合いにはまずそんな者はいないし、こんな山の中を歩いて来たのだ、きっとかなり深い理由に違いないだろう。 ふと、アダムはそんな事を頭で過りながら子供を見た。 「……マルス」 子供は怯えつつ聞こえるか聞こえないかの瀬戸際の声で答えた。 「マルスか、良い名前じゃないか」 アダムは微笑み、マルスの頭を撫でる。 「な……なんかどっかで聞いた名前だなぁ……?」 ディダ復活。 マルスの顔を見ながら考え込むも、思い出せない。 何処かで聞いたような、それとも誰かに聞いたような、そんな感覚だ。 「無理に思い出さんで良い。 マルス、一緒に来るかい?」 アダムはディダの珍しく難しい顔にちょっと引きながら、マルスを連れていこうと誘うが、 「ここが良い、行きたくない!」 マルスはアダムの誘いを拒んだ。 「やっぱり、教会って気味悪いもんな色んな意味で」 「お前は黙ってろ!」 そんなこんなでマルスをディダが預かる事になった。  
/611ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2671人が本棚に入れています
本棚に追加