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「たくっ……コイツは……!
そうだ! 坊や、名前はなんて言うんだい?」
たん瘤が出来、伸びたディダをほっといて、アダムは優しく子供の名前を聞く。
万が一、ディダの言う通り本当だったら困り兼ねないが、自分の知り合いにはまずそんな者はいないし、こんな山の中を歩いて来たのだ、きっとかなり深い理由に違いないだろう。
ふと、アダムはそんな事を頭で過りながら子供を見た。
「……マルス」
子供は怯えつつ聞こえるか聞こえないかの瀬戸際の声で答えた。
「マルスか、良い名前じゃないか」
アダムは微笑み、マルスの頭を撫でる。
「な……なんかどっかで聞いた名前だなぁ……?」
ディダ復活。
マルスの顔を見ながら考え込むも、思い出せない。
何処かで聞いたような、それとも誰かに聞いたような、そんな感覚だ。
「無理に思い出さんで良い。
マルス、一緒に来るかい?」
アダムはディダの珍しく難しい顔にちょっと引きながら、マルスを連れていこうと誘うが、
「ここが良い、行きたくない!」
マルスはアダムの誘いを拒んだ。
「やっぱり、教会って気味悪いもんな色んな意味で」
「お前は黙ってろ!」
そんなこんなでマルスをディダが預かる事になった。
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