第1話プロローグ

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  アダムが去って、最初の頃はマルスはディダになかなか、なつかなかった。 ディダの短気さもあるが、やはり‘神父’の肩書きもあるせいか、ろくに一緒にご飯も食べないわ、水浴びも嫌がるわ、とにかく嫌がってばかりだった。 ディダも疲れはて途方にくれる。 そんな夜だった……。 ディダが何か色々と調べ書き物をしていると、戸を叩く音が聞こえ開けてみると、 「ディダ……」 マルスが枕を持って立っていた。 「どうした?」 少し不機嫌な顔で聞くと、 「ごめん……眠れなくて……」 今まで自分になつかなかったマルスが、珍しい事に素直に答えて、若干びっくりし、少し考え、 「眠くなるまでだったら部屋に居て良いぞ」 照れているのか、頭を掻きながら許可した。 マルスはニパッと明るく子供らしい笑顔で、 「ありがとう!」 ベッドに直行。 「眠たくなったら部屋に戻れよ!」 「うん」 凄く嬉しいのか笑顔だ。 初めて見たマルスの笑顔。 普段だと、いつも仏頂面で何に対しても拒否していたのにあの笑顔、ちょっぴり嬉しくなる。 努力が結ばれたのか、或いはマルスが折れただけなのか。 だが、結果的に笑顔になったので良い方向で受け止めた。 ディダはまた調べながら書き物をしていると、 「ディダ……?」 マルスがベッドから顔を覗かせ、ディダの様子を見て声を掛けてきた。 「何だ? まだ眠れないのか?」 「うん、それと何に書いてるの?」 何の物書きをしているのか、気になるようだ。 「只、別の国の歴史や文化を調べて、ここの国の言葉に置き換えてるだけだ」 そう言いながら、古い古文書みたいな物を目を通す。  
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