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アダムが去って、最初の頃はマルスはディダになかなか、なつかなかった。
ディダの短気さもあるが、やはり‘神父’の肩書きもあるせいか、ろくに一緒にご飯も食べないわ、水浴びも嫌がるわ、とにかく嫌がってばかりだった。
ディダも疲れはて途方にくれる。
そんな夜だった……。
ディダが何か色々と調べ書き物をしていると、戸を叩く音が聞こえ開けてみると、
「ディダ……」
マルスが枕を持って立っていた。
「どうした?」
少し不機嫌な顔で聞くと、
「ごめん……眠れなくて……」
今まで自分になつかなかったマルスが、珍しい事に素直に答えて、若干びっくりし、少し考え、
「眠くなるまでだったら部屋に居て良いぞ」
照れているのか、頭を掻きながら許可した。
マルスはニパッと明るく子供らしい笑顔で、
「ありがとう!」
ベッドに直行。
「眠たくなったら部屋に戻れよ!」
「うん」
凄く嬉しいのか笑顔だ。
初めて見たマルスの笑顔。
普段だと、いつも仏頂面で何に対しても拒否していたのにあの笑顔、ちょっぴり嬉しくなる。
努力が結ばれたのか、或いはマルスが折れただけなのか。
だが、結果的に笑顔になったので良い方向で受け止めた。
ディダはまた調べながら書き物をしていると、
「ディダ……?」
マルスがベッドから顔を覗かせ、ディダの様子を見て声を掛けてきた。
「何だ? まだ眠れないのか?」
「うん、それと何に書いてるの?」
何の物書きをしているのか、気になるようだ。
「只、別の国の歴史や文化を調べて、ここの国の言葉に置き換えてるだけだ」
そう言いながら、古い古文書みたいな物を目を通す。
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