秋の嵐

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「向こうで住むって…もともとカツオ君を追い掛けて行ったんじゃないの?」 「初めはね、けどトルコで何ヶ月か暮らすうち花沢さんもやりたい事出来たみたいです…」 カツオの話によるとトルコに一緒について行った花沢花子は数日間カツオの下宿先に泊まった後自分で暮らすアパートを探すべくすぐにそばから離れて行ったとの事だった。 「まぁ初めは僕の身の回りの世話をするつもりだったらしいんですが彼女が生まれて見た初めての異国の地があまりにも衝撃的で感動したらしくて僕なんかそっちのけ、さっさと自分探しの生活をし始めましたよ!ホント訳判んないんですよ花沢さんて人は。」 どうしようもない自分勝手な花沢の話題を飄々と話すカツオの顔には取り繕った変なわだかまりのような物は皆無で浮絵が案じていた事は全くないように感じた。 「そっか…じゃぁまだ暫くは…」 「トルコが気に入ってもう帰って来ないかも…世田谷の花沢不動産はどうすんだって今度はこっちが心配してるくらいですから!」 調子よく高らかに笑うカツオの顔を見て浮絵の心はまるで迷子を見つけ出した母のような安堵感でいっぱいになった…
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