鷹野孝という男

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「ちわぁ~す!っかれっす!」 始業時間を40分も遅刻して鷹野孝はようやく浮絵達の職場に到着した。 「…………」 鷹野孝はもう既に業務に就いている職場の仲間達の机の間を縫うようにさほど慌てる素振りもなくヨイショと自分の椅子に腰掛けた。 浮絵はわざと鷹野孝に聞こえるように咳ばらいすると財前典子が頭を下げて鷹野孝に目配せをした。 「鷹野君…」 「え?…あ、はいはい…?」 鷹野孝の適当な返事に浮絵は少しムッとなったがその苛立ちをグッと喉奥まで飲み込んだ。 「…鷹野君…何か言う事ないの?」 「…あ、すんません…電車が遅れて…」 浮絵は書類に目を通したまんま視線は鷹野孝には合わせない。 「…ちょっとこっち来て!」 「な…何すか?」 鷹野孝は面倒臭そうに首を回すとダラダラと浮絵の机の前に立った。 「まず貴方ね、もう高校生でもないんだからその軽いちゃらちゃら口調を止められないッ?社会人として相手と会話する言動には程遠いと思うんだけど…」 「そうすかね…それほど気にはならないんだけど…」 「!私が気になるのッ!てゆーか前から気になってたんだけど他の職員みんな貴方より先輩なのよ?少しは先輩を敬う敬意を持ちなさいッ!」 他の職員達は浮絵の言葉を聞きながら聞かぬフリを通していた。 「敬意っていうのは経験だと思うんだよなぁ…」 「は、はぁぃ!?」 鷹野孝の言葉に浮絵は眉間に皺を寄せた。 「だからホントに相手の事尊敬できんのはやっぱり長年付き合っみないと…先輩だからってみんながみんな立派な人間とは限んないし…」 何を言っているのだと浮絵をはじめそこにいた先輩職員らが一斉に鷹野孝を見た! 「あ、貴方ねッ!」 「朝から何カリカリしてんですか主任?生理っすか?」 浮絵は開いた口が塞がらなかった…
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