鷹野孝という男

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「もういいっすか?」 「ち、ちょっとまだ話は終わっていないわ!」 鷹野孝は明らかに不愉快そうに踵を返すと自分の席に座り鞄を探り始めた。 「ちょっと鷹野君あなたねッ、一体どういうつもり?ちゃんと真面目に人の話を聞いたらどうなのッ!?」 今日という今日は我慢ならない、浮絵の中で溜まりに溜まっていた怒りが沸々と湧いて来た。 「だからもう遅刻しませんて!それでいいでしょ?」 浮絵はたまらず鷹野孝の前に仁王立ちして今度は真っ直ぐ鷹野孝を睨み付けた! 「……財前さんに書類の整理頼まれたわよね?請けたならどうして最後まできちんと業務を全うしないの?」 「あぁアレっすか、あれは財前さんが…」 「言い訳はいい、貴方の言い訳はもう聞き飽きた!入職してからの態度といい仕事のいい加減さといいもう我慢出来ないッ、私はやるべき事をきちんとやらない人間が一番嫌いなのッ!」 浮絵は鷹野孝の眼前に人差し指を突き付けたが鷹野孝は反省のそぶりすらなく逆にニタニタと薄笑いを浮かべていた。 「やっぱり生理なんだ…いつも冷静沈着な主任が顔真っ赤にしちゃって。」 「はぁ?貴方ねッ!いい加減に…」 「何か怒った顔も可愛いね主任♪」 「…………」 正に糠に釘、この男に何を言っても無駄なのは前々から承知のはず。浮絵は眉間の皺を直すようにオデコに手を当てて深いため息をついた…
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