鷹野孝という男

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《鷹野孝》… 最近の浮絵の最大の頭痛の種だ。横浜の大学を卒業し地質学の専攻過程を経て半年前福岡の博物館から浮絵のいる今の職場に異動になったばかりの学芸員で、向こうの職場でも何かと人間関係で問題を起こして来たくせ者だと浮絵も向こうの上司から聞かされてはいた。 しかしまさかここまでやりにくい男だとは浮絵も夢にも想像していなかった… 「これ、やりゃいいんでしょ?今日中に仕上げますからぁ~!」 「!ッ………」 (何なのよこの態度ッ、馬鹿にするのもいい加減にしなさいよっ!) 先日せっかく磯野カツオに再会し苛立っていた気持ちが少しホッコリしたと思ったらまたコイツのせいでそんな気分を目茶苦茶に掻き消される事に浮絵はやり場のない怒りを治めずにはいられなかった。 「ハァ~…!」 浮絵は怒るのも諦め自分の席に座り頭を臥せて少し気分を落ち着けた。 「ち、ちょっと鷹野君ッ、主任に謝った方が良くない?」 この半年間ほとんど職場の誰とも会話を交わさない鷹野孝だったが、唯一といっていいほど会話を交わす財前典子が眉をハの字にして鷹野孝の顔を見た。 「あんたのせいでこっちまでとばっちり喰らうじゃないのよッ!」 「だぁら、ちゃんとやるって言ってんだろ!」 財前典子は何よ偉そうにと言いたげに口を尖らせそれ以上もう何も言わなかった。 (あ~腹が立つッ、何なのよアイツ!) 浮絵は自分には到底手に負えない新人類を睨みつけ同時にそんな異端社員をも教育しきれない自分の指導者としての人間の上に立つ度量がない事も痛感していた…
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