鷹野孝という男

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その後浮絵は遺跡調査の依頼や都内の学芸員仲間で集う定例会議等に出席し、再び事務所に帰って来たのは8時を回った頃だった…。 (……疲れたぁ~) ほのかに明かりがついた事務所はもう既にもぬけの殻で職員は全員帰宅したようだ。 (まぁ彼の処遇は林館長に任せとけばいいし…あまりカリカリしないでおこ。でないとこっちの身体がもたないんだから!) 戸棚に重要書類を片付けながらぶつぶつ独り言で問い掛けるように浮絵は今朝あった虫ずが走る出来事を思い返していた。 「あれ?…主任帰って来たんスかぁ?」 「ッ!!……」 突然背後から声が上がり浮絵はその聞き慣れた声に一瞬背筋に悪寒が走ったような気がした! 「ッてッ、な、何でまだ居るのッ!?」 振り向いた浮絵の視線の先には何とあの鷹野孝がいた。浮絵は思いの他動揺した。 「事務所にはも、もう帰って誰も…いないと…コココこんな時間までな、な、何してるの?」 「ヤダなぁ主任ッ、資料まとめとけって言ったの主任だよ?」 鷹野孝は笑顔でコピーを取っていた。 「もしかして…し…仕事…してるの?」 「もしかしてって当たり前だろッ?ここ職場だぜ?」 今まで散々サボっていたお前が言うなと毒づきたくなったが浮絵はそんな事全然興味なさげに淡々と一人、帰り支度を始めた。 「わ…私の前だけいい子ぶっても駄目よ。これまでの仕事ぶりはきちんと見てきてるんだから…」 「…ハハハ!ばれたかッ、さすが主任!」 「はッ、ハァ!?バレたって貴方さっきまで真面目に仕事してたんじゃないの?」 浮絵は鷹野孝の言葉に呆れはてた。
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