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(午後5時成田空港到着、あぁ~んこれじゃ間に合わないよぉ~ッ!)
事務所の机の上にある殺伐とした仕事の書類の束をパンパンと手早く纏めると伊佐坂浮絵は腕時計を見ながら飲みかけのカップコーヒーを一気に片付けた。
「主任、何そんなに急いでんですかぁ?」
向かい側に座る部下の鷹野孝が慌てる浮絵の一部始終を不思議そうに眺めながら声をかけた。
「あ?う、うぅ~ん…鷹野君には関係ない、じゃ後はヨロシク!あ、来週の奈良の遺跡調査のアレまとめといてね!」
隣の席に座る財前典子に軽く目配せすると浮絵はハンガーからコートを取りハイヒールをカツカツ鳴らしオフィスの玄関を飛び出した。
「……な、何なんだぁ?尋常じゃない慌て方…」
鷹野孝が先輩の財前典子を見て首を傾げた。
「さぁ…伊佐坂主任が早退するなんて珍しいよね。仕事一筋の熱血女なのに。」
あぁ~なるほど~と鷹野孝は腕組みをしてほくそ笑んだ。
「何…な、何よ!」
「アレっすよアレ…」
「アレぇ?」
鷹野の不敵な笑みに今度は財前典子が首を傾げた。
「アレっちゃぁ決まってんでしょが、《オトコ》ですよオ・ト・コ!」
「お、オトコぉ?主任にぃ!」
財前典子は鷹野の言葉に思わず椅子から立ち上がった!
「居ても可笑しくないんじゃない?まぁ少し行き遅れ的な所はあるけど40歳前にしてあのスタイルに美貌だぜ?男の一人や二人居ても可笑しくないっしょ?」
まぁそうなんだけどと財前典子は胸を落ち着けた。
「だけど主任に…まさかねぇ…」
「……ま、事オトコに関してはあの頑なな性格だからうまくはいかねぇだろけど!」
主任の浮絵が居なくなった途端一番後輩の鷹野は急に態度が大きくなった。
「何よ、主任の事何でも知ってるような言い方して!」
財前典子は机に脚を上げる鷹野の横柄な態度にムッとした。
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