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昨日おろしたてのハイヒールの踵がやけに痛い。こんな事なら以前までの履き慣れた靴の方がまだマシだったと後悔しながら浮絵はタクシーから降りて空港ターミナルを腕時計と睨めっこしながら速足で歩いた。
(え~と国際線の帰国ゲート帰国ゲート…あ!あれだ!)
ピカピカに磨かれた長い廊下の先に海外から帰国するゲストゲートがある。ゲートからはちらほらと外国人旅客が降りてくる…
(よかったぁ~何とか間に合った!)
浮絵は辺りをキョロキョロ見回しとりあえずロビーの椅子に腰掛けた。
(フゥ~…晴れの帰国に先に出迎えられないなんて洒落になんないもんね…)
浮絵は着ていたベージュのダッフルコートを脱ぎ椅子の背もたれに引っ掛けた。
「う~き~え~さんッ!」
「キャッ!!」
突然背後から声がして浮絵は思わず椅子から飛び上がった!
「ハハハ、僕ですよボク!」
「かッ、カツ…カツオ君ッッ!?」
そこには真っ青なスーツケースに肘をついた真っ黒なあの磯野カツオが笑顔で頭を掻いていた。
「もうやめてよ~心臓が飛び出しそうになったじゃない!びっくりさせないでよ!」
「すみませんッ、アハハ…ここで座って待ってたら浮絵さんが眼の色変えて向こうから走って来たもんだから。」
「…え…ま、もしかして…もう先に…おり?…」
「はい♪」
カツオはいつもながら屈託のない笑顔で浮絵に笑いかけまた頭を掻いた。
(アッチャ~…ヤッちゃったぁ!)
浮絵は思わず天を仰いだ。帰国ゲートから帰ってくる磯野カツオを真っ先に迎えるネンミツな計画はここで見事に粉砕された。
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