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「すみません浮絵さん、出迎えなんてさせちゃって…」
「あぁん何水臭い事言ってるのよッ、昨日今日の間柄でもあるまいし!あ、脚大丈夫?」
空港ターミナルの長い廊下を歩きながら浮絵はカツオのギプスでぐるぐる巻きにされた右足首を気遣かった。どうやらカツオは運悪く数週間前に現地の勤務先のホテルの階段から足を滑らせたらしい。
「んもぅ、脚を骨折して歩くのままならないからワカメの奴に車で迎えに来るよう頼んでおいたのに!ホンッとアイツは使えない妹だよな。」
カツオは馴れた手捌きで松葉杖をカンカンと操り口を尖んがらせた。
「あ~、そんな毒吐いちゃ可哀相よ!ワカメちゃん今クラス担任任されてるんだからいつ学校の急用で来れなくなるか解らないじゃない!」
浮絵はカツオの真っ青なスーツケースを押しながら学校の仕事で多忙な妹ワカメを庇った。
「だったらジム通いで暇してる姉さんに頼めばいいじゃないです?何も浮絵さんにわざわざ…」
「………」
私じゃ役不足?…思わず口に出しそうな言葉を喉奥まで飲み込むと浮絵はカツオの後をゆっくり歩いた。
「昨日急にワカメちゃんから電話で頼まれたのよ、私が残業で行けそうにないから浮絵さんお願い出来ないかって…せっかく3年振りにトルコから帰って来る兄を誰も迎えに行けないなんて可哀相だからって…」
「…ホントかなぁ…それワカメの言いそうにないコメント!」
コラ兄貴!妹の健気な愛を信じてあげなさいと浮絵はカツオの背後からカツオのお尻にスーツケースの角を軽くふざけて押し当てるとカツオはウワッ!といった大袈裟なリアクションで浮絵の行動にただびっくりしていた。
「何か食べる?時間あるでしょ?」
浮絵は真っ黒に日焼けしてまた一段と大人びた顔に成長したカツオを見て少しドキッとした…
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