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空港ターミナル内にある食堂街は夕方の買い物客と食事客でごった返していた。
「ゆっくりディナーでもって考えてたんだけど…脚も怪我してるしこの混雑じゃ到底無理みたいね、サンドイッチでも買ってロビーで摘もうか?それでいい?」
余りの人の多さに戸惑いながら浮絵は松葉杖のカツオをロビーの椅子に先に腰掛けさせると自分は側のパン屋に晩御飯の食料調達に走った。
「ツナとアンチョビ…生ハム…何でもアリだったよねカツオ君は。」
「あ、ありがとうございますッ!いただきます。」
カツオは恐縮そうに浮絵が購入してきたサンドイッチを手に取った。
「え~コホン、実~ぅに質素な帰国歓迎会になっちゃったけど…」
浮絵は一度咳ばらいをすると椅子に再び静粛に座り直した。
「いやとんでもない…これも何か僕らしいですよ。故郷に錦を飾る最高の帰国歓迎会の間際にこうして脚を骨折してるってね!鈍臭いというか要領が悪いというか…」
「磯野カツオ…らしいか!ハハ!」
浮絵は思わず微笑みを浮かべた…熱いコーヒーを片手に3年前とは何等変わらないカツオの性格がそのまま現れたその《彼らしい》言葉に浮絵は人知れない懐かしさを感じていた。
「ではではお帰り、カツオ君!」
「はい…ただいま!トルコから無事帰還致しましたッ!」
互いの持つコーヒーを祝杯代わりにし浮絵とカツオは3年振りの再会に喜んだ。同時にターミナル内には上品な英語でのフランス・パリ行きの飛行機の搭乗締め切り案内が流れていた。
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