大和路メモリー

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「正直言えばいいじゃんか、光の美しさに誘われて蛍を見に来ましたって…」 「べッ、別にアンタには関係ないじゃない!」 浮絵はにやける鷹野孝を無視するかのように建物に歩を進めた。 「綺麗だよな……」 突然鷹野孝は浮絵を見つめながら言葉を発した。 「ハァ?あ、アンタ何言ってんの?この期に及んでまだ私をからかう…」 「蛍…ホントに綺麗…」 「ハッ!…あ…い、いやホ、ホ、蛍の事ね…ハハハそうよね…」 浮絵の勘繰りに鷹野孝は蛍に決まってんじゃないすか~他に何の事だと?と真剣に質問した。浮絵はただ赤面しながらしどろもどろで言い訳をしたが自分でも何を言っているのか解らなかった。 「まぁ座んなよ主任ッ、主任も蛍見に来たんだろ?」 鷹野孝は自分の座っている石垣のスペースを開けたが浮絵はそれには応じずただ離れた場所でじっと立っていた。 「ホント…素直じゃないよな…」 「余計なお世話よッ、せっかくの綺麗な光の余韻を楽しむつもりが誰かさんのせいで台無しだわ!」 このまま蛍の光の円舞を見ずに帰るのも勿体ないと感じた浮絵は腕を組むと鷹野孝を無視するようにその場で静かにしゃがみ込んでじっと蛍を観察し始めた…浮絵と鷹野孝は離れた場所で暫く光の競演を黙って見続けていた… 「蛍って何かイイよね…命懸けで光を放ちはかない一生を全うするんだ…」 「………」 浮絵は不自然にいつになく神妙な鷹野孝の横顔を見つめた。 「無作法で非常識なアナタからそんなセンチメンタルな言葉が出るとはね…」 浮絵は思い切り嫌味のつもりだったが鷹野孝はそれに反応する事なくただじっと蛍の光を眺めていた…
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