大和路メモリー

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二泊三日の奈良の史跡調査は滞りなく終了した… 「よし、忘れ物ないわね…」 旅館で購入した各方面に配るお土産の束をボストンバッグに詰め込むと浮絵は一度グルッと部屋を見渡して客間を出た。 「あ……」 そこにまるで測ったかのように向かいの部屋から手荷物をまとめた鷹野孝が帽子を目深に被り現れた。 「……無事終わったわね…ごく…」 「ねぇ主任、仕事も片付いた事だし、浪花の街を俺とデートしない?」 「ハァ?」 労いの言葉でもかけようかと思った瞬間、鷹野孝のいつものテンションが現れ、浮絵の気持ちは一気に萎えた。誰があんたなんかとと言いかけた矢先鷹野孝が言葉を被せた。 「……と言いたい所だけど!ヘヘ~ッ俺実はこれからこっちで用事があってさ、主任の相手してやれなぃんだ~」 「あ!そ!こっちだってあなたとデートする程暇じゃないわ!」 浮絵は強がってみせた。しかし内心今回の調査の御礼に昼ご飯だけでも奢ってやろうと少しでも優しさを見せた自分が馬鹿みたいだとも感じ一気にそんな自分が気恥ずかしくなった。 「じゃまた明日東京で!調査資料まとめて今週中に提出、解った?」 「へいへいわかりやした!」 生温い返事に浮絵はムカッときたがもう少しでも関わりたくないと自分だけ先にチェックアウトしにロビーへ向かった。 (何よ!人がせっかくご馳走してあげるって言ってるのにッ!) 浮絵は少し不機嫌そうにヒールをカンカンと鳴らし足を通した。いつもの調子なら行く行く~と二つ返事で浮絵の誘いに乗るはずの鷹野孝だがそれを拒んだ彼の様子に浮絵は少し気にかかった。 (用事って何だろ……こんな関西に?)
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