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そこにいたのは紛れもなくあの天敵、鷹野孝だった。
(アイツ…先に帰ったんじゃなかったんだ)
仕事が終わり別れ際用事があると言っていたあの鷹野孝がまだこの大阪にいたなんて…よりによって帰りまで同じ時間の同じ新幹線…最後の最後まで何て悪運の持ち主なのか、向こうが?いや、私が?
はっきり表情は見て取れなかったが鷹野孝はさっき別れ際に着ていた服とは違う真っ黒なスーツを着て誰かと話し込んでいるようだ。
(ま、いいわ…車両はかなり先の方だし向こうはこっちに気付いてないみたいだし…誰かと話してる…)
とはいえ少し柱の陰に隠れ無関心を装いつつも浮絵も目だけは鷹野孝のほうを見ていた。
(…女…の人?)
浮絵の視線の先には鷹野孝といる若い女性の姿があった。
(………)
浮絵の喉がゴクリと鳴った次の瞬間、その若い女性が突然鷹野孝に抱き付いた!
(……!)
浮絵は咄嗟に視線を外し思わず目の前にあったテーマパークの看板を直視した!
(私…今…もしかして見てはいけないものを見てしまったァ?)
浮絵は恐る恐る改めて鷹野孝と女性が抱き付いている現場を見直した。やっぱり抱擁している…それも尋常じゃないくらいに強くしがみついているという感じだ…
(ま、マジィ~あ~ヤダヤダ!私ったら何でこう色々ついてないんだろ!)
浮絵は我先にと到着した新幹線の車両に飛び乗ると私は見なかった、何にも見てはいないんだからと念仏のように唱えながら座席に腰掛けて目をつむっていた…
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