秋の嵐

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浮絵が事務所に帰ると鷹野孝は相変わらずやる気なさそうに机で鉛筆を転がしていた… (ふん…能ある鷹は爪を隠す!…とでも言いたい訳ね!) その鷹野の姿を横目でチラチラと見ながら浮絵は何事もなかったかのように自分の席についた。 でもよくよく考えるとこんな事で腹を立てている自分が何よりも情けなくなってくる…向こうが出来るならこっちだって上司として出来る所を見せてやれば済む事だ、そうだ努力しかない…自分はそうしてこれまで頑張って来たんだから… (そうよ…こうしてウジウジ考えてるって事がそもそも駄目!まるで自分の無能さを認めてしまうようなもんじゃない!) 浮絵は自分の気を引き締めるかのように大きく息を吐くと出張中に山のように溜まった書類に目を通し始めた… (他人は他人…それを妬み出したら自分じゃなくなる…) 浮絵は煩雑な書類に目を通しながら何度も自分に言い聞かせていた…
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