狂ってゆく母

心のネジが外れてゆく
いったい何本外れてゆく

病院の一室
暗(やみ)の中で
母のネジが外れてゆく

本当の心は何処までも
裏切り続ける…
元気で健康な母を
見た事がない…

心の底から笑う母も
走り廻る母も
鼻歌を謡う母も
私は見た事がない…

このまま…
ずっとこのまま…
ただ狂ってゆく母見てゆかなければならないのか…
元気な母なら
健康な母なら

私の頭は曇ったまま
私の頭は晴れないまま
いつも息が詰まる
いつも空気が悪い
頭は毎日スッキリしない

今
目の前の狂った母を
後
何年見続けられるのか

空を見つめ
時折デンパが繋がり
笑顔を見せる母

私は
正気な心で
後
何年見守れるのだろう

外れてしまったネジは
もう締める事が出来ない
このまま
毎日…
毎時…
一本ずつ
外れてゆくネジを
拾い集めるにはどうすればイイのだろう…

ボロボロと
簡単に
抜けてゆくネジ…

狂っている母がまともなのか？

まともな母が狂っているのか？

今も
新しい
ネジは緩んでいる

いつかネジを全て落とし
廃人のようになる母を
私は
全て受け入れられるのか…