女子トイレ

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  唯一なごめる、昼休みの女子トイレ。 派遣のお姉さん方の話は、ホッとする。 唯一、会社で女に戻れる時間。 「鮎川課長の香水って特殊な香りじゃない?」 お姉さんの一人が言う。 鮎川課長。 沙織の隣の課の課長。 隣の課はハードウェアの営業支援の技術部隊。 鮎川は半年前に営業部から鳴り物入りで技術職の課長になった。 歳は三十三歳。 三十三歳で課長。 若いわりには出世が早かった。 「あの香水は、Diorの海外限定版ですよ。たぶん」 沙織は油取り紙で鼻を撫でながら言った。    
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