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しかしその言葉に、隣からくすくすと少し押し殺した笑い声があがる。
「ケイってば、フルーティーパフュームの香りを嗅いじゃって大変だったのよ」
細身の女がじいやに、告げ口するように声を抑えて笑いながら言う。
綺麗にカールした淡い金色の髪がかかる左肩にバラのタトゥーが見えた。
「アイ!そればらすか普通!?」
ケイ、と言われた大柄の男が両手で頭を抱える。
「フルーティーパフュームの香りは男の正気を失わせると情報屋から言われていただろう。好奇心に負けて嗅いだお前が悪い」
腕組みをしていたもう1人の男も笑いながら言う。
ブランドもののスーツを隙なく着こなし、黒ぶちの眼鏡をかけている。
軽く眼鏡を押し上げる右手には、少し不似合いな古い指輪がにぶく光っていた。
「ほらね。ユウがいなかったら大変だったんだから」
アイが悪戯っぽく笑いながらケイに軽く舌を突き出す。
「ちぇっ」
ケイが舌打ちしてそっぽを向いた。
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