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「結局、丸一日かかったな」
溜息をつき、横たわっていたベッドから飛び降りた。
「飯作んのダルいし、コンビニ行くか」
ジーンズのポッケに財布を押し込み、部屋を後にした。
春が近づいてるとは言え、まだ夜は寒い。
冷たい空気が和仁の肺を満たす。コンビニでお茶とお弁当を買い、お気に入りのコンビニで夜空を見上げた。
あの頃と同じ、怖いくらい綺麗な夜空が視界に広がる。
「…和仁?」
名を呼ばれ、振り向いた先には一人の女性が立っていた。
「愛子?」
「和仁、なんでここにいるの?実家に帰ったんじゃなかったの?」「うん、アパートの片付けと身辺整理しに帰ってきたんだ」
「そうなんだ…」
愛子と呼ばれた女性は、少し気まずそうに顔を伏せ立ち去ろうとした。
「愛子、もうちょっと話しない?もう、俺はお前を許してる」
和仁は、空を見たまま呟いた。
「お前は、自分が幸せになれる最良の道を選んだんだ。それを責める権利なんか俺には無いよ」
愛子は、相変わらず顔を伏せたまま和仁に背中を向ける形で腰掛けた。
「でも、アタシ和仁を裏切って違う男に逃げたんだよ?」
「いや、あれは俺も悪ぃーんだ。気にするな。お前が今幸せなら、それでいいさ」
和仁は、立ち上がり食べ終わった弁当とジュースのゴミをごみ箱に投げ捨てた。
「だからさ、俺の分も生きて幸せになってくれよ」
そう呟き、和仁は帰ろうとした。
「ねぇ、和仁…アンタ身体大丈夫なの?」
その問い掛けに対して、和仁は寂しい笑顔を浮かべ去っていった。
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