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「なんか気になってよく見たら───」
「見たら?」
思わず身を乗り出す綾実に意味ありげに梓は笑う。
「なんと、男に呼び出されてたよ」
さすがモテモテ君!と嬉しそうに両手を叩く梓に綾実は頭痛を覚える。
「男とかにもモテるとか。やばい、才能感じちゃった」
腹を抱えて笑う梓に対して綾実はある考えに思い至りどんどん青ざめる。
「それ、いつの話…?」
「綾実が来る少し前?」
だったかなと続ける梓はそれがどうしたと言いたげだ。
しかし今はそれに構っていられない。
「何人に呼び出されてたの?」
うーんと小さく唸ってから右手を一本二本と折っていって、三人いや四人?などと曖昧だ。
しかし一人ではなく複数名に呼び出された事が分かった。
これで今思い至った考えは間違いないと確信する。
これは呼び出しは呼び出しだが、甘い恋だとかの可愛い呼び出しではない。
否、恋関係ではあると思う。
思うがしかし、甘くも可愛くもないだろう。
どうするか暫し考える。
梓に梓が考える呼び出しじゃないと言った所ではたしてどうなるか。
事が余計にややこしくならないか。
ここは速やかに教師を呼ぶべきか。
綾実が梓に会ったのは5分前。
少なくとも既に5分は経過している。
時間はない。
「梓、多分それ、告白とかじゃないよ」
ん?と首を傾げる梓を残して綾実は駆ける。
が、一旦その足を止め、───
「梓はそこに居なさい!」
保護者は子供に言い付ける事を忘れなかった。
「………告白、じゃない?」
笑いの余波で目尻に溜まった涙を拭い、綾実の居なくなった先を見つめる。
「とすると…………喧嘩…とか?」
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