4人が本棚に入れています
本棚に追加
にんまり。
正にそう表現するのがぴったりな顔だ。
こいつは思ったより面白い事になっている。
梓の中に、厄介な興味が生まれてしまった。
綾実にはなにか言われたが、そんな事はどこ吹く風だ。
飽くなき欲求を満たす為、自分は自分に素直に行動しよう。
綾実が聞けばどつかれそうだが、残念ながら綾実は今ここにはいない。
そうと決まればうん、と誰にともなく一人頷いて、モテモ──…ヤザワ君が消えた方に迷いなく歩を進める。
「あのー…俺ノンケなんだよね」
だからごめーんね、と軽く続きそうなその調子に周りの空気が一度下がる。
周りを取り囲む、まだ少年の域を出ない成長の延び白の残った男たちの顔は、囲まれている男の安い挑発に怒りは頂点に達し、顔は皆一様に真っ赤だ。
「あれあれ?」
どうしたの、と小首を傾げる姿は、本当にこの状況を理解していない様に感じる。
しかしそれが違う事は目を見れば分かる。
戸惑っている顔を作りながらも、その目は弓の形になっているからだ。───つまり可笑しくて堪らないという顔。
それが余計に気に入らない。
最初のコメントを投稿しよう!