ヒーロー

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「──おい、いい加減にしろよ」 取り囲む中で一番体格の良い少年が掴みかかる。 流石にやばいかなとも思ったが、こんな馬鹿らしい呼び出しをされた身にもなって欲しい。 いきなり顔と名前が一致しない女子を引き合いに出され、いきなり取っただの何だの喚かれた挙げ句、それは少年達の片想いの八つ当たりとその会話から察せられた。 「自分が振り向いて貰えないからって面倒くさい」 つい本音が零れてしまったのも大目に見てほしい。 「そんな器が小さいつまらない男だから振り向いて貰えないんじゃないかなー?」 く、と暗い笑いを浮かべ、離せよと乱暴に掴まれた手を振りほどく姿もどこか様になる。 ここに取り巻く女子達がいれば感嘆の吐息を漏らすか、黄色い嬌声を上げるかしただろう。 それは色男故の特権だ。 だが今、ここではその整った顔立ちは少年達に劣等感を与えるだけだ。
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