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「──で、具体的に呼び出しまでしてどうしたい訳?まさか両想いになれる様にキョーリョクして下さいとか言うの?」
気になる女子の惚れた相手を呼び出した所で想いが成就するとでも思っているのだろうか。
馬鹿かこいつらと侮蔑を露にすると、もう我慢がならないと一人が太く逞しい腕を振り上げるのが視界の隅に入る。
その状況をやばいと思うより、内面は女々しい癖に体格は自分よりよっぽど雄々しいんだよな、と遣る瀬なさが先に来た。
共学になったことで今年から出来た野球部の為に、スポーツ推薦で入学したやつらなのだから体格が良いのは当たり前か。
自分でも呑気な思考回路だなと自覚しつつ次の衝撃に備えるべく、きつくその両眼を閉じた。
─────が、
「ぼーりょくはんたーーい」
さして反対だと思っていないであろう呑気な声に、水を打った様にその場の空気は静まりかえった。
地獄に神だ、相手を縋る思いで見つめて再び肩を落とす。
それも仕方の無いことだと分かって欲しい。
取り囲んだ者達は一瞬教員かと肝を冷やしたが直ぐに落ち着く。
それは声の主が活発そうで気は強そうだが、至って無害な少女だったからだ。
嗚呼、神は自分を嫌いなのかもしれない。
声なんかかける前に先生呼べよ!とお門違いな怒りをぶつけたくなる。
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