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幼い子供の行動範囲は知れたもので、俺の兄貴と姉貴の探索範囲もそんなに広くはない。
冬の冷たさが廊下を伝い、院内がとても寒い。寝間着でいれば、風邪をひいてしまいそうだった。
だけど、それは二人も同じなはず。
早く探して、部屋に戻ろう。きっと、二人も寒いに違いない。
その一心で廊下を一歩、また一歩と進んで行った。
そして、歩く内に、聞き慣れた声が微かだが聞こえてきた。
それを頼りに、俺は足を進めた。
近づくにつれて、二人の声が大きくなっていく。そして、二人がもめていることがわかった。
俺は、物陰に隠れて、寒さに耐えながら、二人の会話を聞いていた。
『……やっぱり、お前たちが入る必要はない。俺だけで…』
『兄さん何言ってるのよッ! 兄さんだけが行くなんて…。私だって…』
『お前まで来たら、アイツはどうするんだ? 誰が面倒をみるんだよ? 一人には出来ないだろ?』
『アノ子も一緒よッ! 正直、軍人にはさせたくはないわ。だけど、アノ子は軍人になりたいって、いつも私たちに言ってたじゃないッ! 軍人になってみんなを守るんだって…』
『それは…わかってる。だけど…』
『いいえ、兄さん。多分…、わかってないわ』
その言葉を発した瞬間の姉貴が、一瞬、お袋の姿と重なった。
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