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『兄さんも私も、もぅ自分の望む未来は迎えれないわ。だけどアノ子には…、まだそれが出来る。やっぱり…、アノ子には軍人になんてなって欲しくないケド、私たちの代わりに、自分の夢を掴んで欲しいのよ…』
姉貴は泣いていた。
いつも強く優しく、時にお袋以上に厳しい姉貴が、決して弱さを見せなかった姉貴が、泣いていた。
『………』
そんな姉貴の言葉に、兄貴は無言でいた。
そして、すすり泣く姉貴をそっと抱き寄せ、話始めた。
『…お前の言う通りかもしれないな。わかったよ。みんなで、行こう。そしてやり直すんだ。元通りに…とは、いかないだろうけどさ』
兄貴の言葉に、姉貴は頷いた。
『部屋に…、戻ろうか』
そこで二人は、初めて俺が近くにいた事に気付いた。
姉貴は慌てて涙を拭い、兄貴の後ろに隠れる。
『お前…、風邪ひくぞ』
『兄ちゃんと姉ちゃんだって…』
ふてくされた顔で俺が答えるものだから、兄貴は"参ったなぁ"という顔で、俺の頭をクシャクシャに撫でた。
そしてコレから数日後、俺たち兄弟は退院し、そのまま迎えに来ていたランドと共に、新天地へと向かった。
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