ジキル

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    あの事件から2年。 元住んでいた家は取り壊され、まだ使えて、ダメージが無い、俺たちには不要な物は、全て売り払った。 手元に残ったのは、親族で撮った写真だけ。 遺品も土地も、何もない。 あっても仕方なかった。だから売り払った。 俺たちが住んでいる家は、ランドが手配してくれた。 たまに、彼が訪ねて来ることもあった。 俺は幼年学校の三年生に進級し、兄貴と姉貴は、一足先に戦場に出ていた。 それでも、二人はちゃんと家に帰って来る。 ただその時間が、かなり遅いときもあるため、姉貴のスパルタ式家事講座で叩き込まれ、一応一人でなんとか料理その他もろもろ出来るようにはなった。 兄貴の言っていた通り、元通りとはいかないものの、毎日が楽しかった。 学校から帰れば二人がいて、三人で食卓を囲み、その日のことを話して笑いあった。 だけど…、一度狂った歯車が、再び元通りになるわけがなく、ガラスを叩き割るように、神はこの日常を粉々にした。    
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