ジキル

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    毎年変わらないクリスマス。 針を刺す寒さの中、まだ暖かい布団を蹴飛ばし、冷たい廊下を裸足で駆け抜け、階段を勢いよく降りる。 下の階では、両親が朝の支度をしている。 親父は新聞を広げ、お袋が朝食の用意をしている。 クリスマスというイベントの意味を知ってから、毎年変わらないセリフを二人に投げ掛ける。 『サンタさんはー?』 『今日はまだイヴよ。サンタさんが来るのは明日』 『ホント、気が早いよなぁ。いったい誰に似たんだ?』 幼い俺の無邪気な問いかけに、二人も変わらないセリフを返す。 『朝から元気よねー』 『俺にもそのエネルギーわけて欲しいよ』 姉貴と兄貴が寝間着姿で降りてくる。 こうしていつもと変わらないクリスマスの一日が始まる。 今年はどんなプレゼントが貰えるんだろうか。 待ちきれず早く明日になれと願う。 両親は仕事に出掛け、兄貴と姉貴と俺とが家に残る。 昼食を振る舞うのは姉貴。 夕方が近づく頃には、親戚と両家の祖父母が集まる。 会話の中心にいるのはもちろん、兄貴と姉貴と俺。    
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