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全員が一瞬沈黙し、玄関へと視線を走らせ、食事を再開する。
『こんな時間に…いったい誰だ』
親父が立ち上がり、玄関へと向かう。
好奇心から俺も付いていく。
内心、あの時はサンタが来たと、本気で思っていた。
用心深い親父は扉を開ける前に、チェーンをしてから開けた。
そして何を見たのか、真っ青になった親父が振り返り、大きな声で叫んだ。
『逃げろッ!!』
刹那、扉を勢いよく蹴る音がした。
怖くなった俺はダイニングへと走り、兄貴と姉貴の後ろへ隠れた。
そしてそのすぐ後、"タァーン"と乾いた音が家の中に響いた。
幼い俺にもスグにわかった。
銃声だ。
テレビでよく耳にする、あの銃声だ。
そして、親父や親戚の叔父たちが趣味でやっていたハンティングに使う猟銃。それとも音が似ていた。
兄貴と姉貴は俺を連れて、階段を駆け上がる。
兄貴は姉貴の、姉貴は俺の手を握る。
姉貴の手はいつもの優しさが無く、とても強く力が入っていた。
……今でもあの感触を思い出すことがある。
階段を上がりきり、両親の寝室に入る。
下の階からは、何発もの銃声と悲鳴に続き、幼い子供の鳴き声が響き渡る。
微妙に違う銃声は、親父たちが猟銃で応戦しているからか。
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