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『もぅ…ヤツラは、いない。大丈夫だ…。だけど、下へは…行くな』
そこまで言って、兄貴は…崩れ落ちた。
クローゼットの戸をゆっくりと開き、姉貴と俺は部屋に出た。
張り詰めていた何かが途切れたのか、崩れ落ちた兄貴は、拳を何度も床に叩き付ける。
そして…。
『あぁ…あぁ…、ぅあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあッ!!』
喉が裂ける程の叫び、兄貴の様子と、さっきまでの下の階でしていた音から、姉貴もその場に崩れ落ちる。
この日、俺たち兄弟は、頼れる大人を一気に失った。
同時に、兄弟という壁が消えた。
そして、惨劇からかなり時間が経った夜も遅い時間に、サイレンを鳴らし、警察がやって来た。
一番近くの人が、様子がおかしいということで、通報したらしい。
家の中に人が入る音がしてスグに、誰かが嘔吐する声が聞こえた。
ひどい有り様だったのだろう。
家の中を捜索するためか、階段を上がる音が、ゆっくり、ゆっくりと近づいてくる。
最早生きる気力を無くした二人は、床に力なく座り込むだけで、その音に、何の反応もしなかった。
一緒になって座っていた俺は、部屋の出入口に顔を向けていた。
そして、ゆっくりと扉が開き、紺色の制服に身を包んだ警察官が現れた。
『せ、生存者…。生存者ですッ!! 生存者を発見しましたッ!!』
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