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それからは、次々と警察官がやって来た。
兄貴より少し歳上な雰囲気の若い男性警察官が、俺たちと一緒にいてくれた。
その人は制服ではなく、スーツを着ていたが、胸ポケットに警察手帳を挿していた。
終始無言の中、制服警官が部屋に来て、スーツの警官とアイコンタクトをとる。
『それじゃあ…、一度病院に行こうか』
スーツの警官に連れられ、階段を降りる。
生臭い。
あの日、初めて血の臭いを嗅いだ。
家の中は、いつものような暖かさは無く、壁や床に、真っ赤な鮮血がこべり着いていた。
綺麗に並べられていた食事も、野性動物に食い荒らされたようだった。
遺体は無かった。
警察が既に回収したのだろう。
成長してから知ったことだが……。
あの時回収された遺体は、両祖父母と親父。そして、叔父に親戚の小さい"男の子"たちに、脱走兵が二人と、お袋や叔母さん、親戚のお姉さんに幼い女の子の姿が無かった。
お袋たちの遺体は、数日後、別の場所で発見された。
凌辱の限りを尽くされ、ゴミの様に、寒い雪の降る外に、捨てられていた。
無論、発見された時、既に息はなかった。
俺たちは救急車に乗せられ、病院へと搬送された。
道中、何かに気付いたのか、兄貴は姉貴と俺を、姉貴は俺を、見つめていた。
そして、姉貴が俺を抱きしめて、兄貴が姉貴と俺を抱きしめた。
『守るから…』
二人は、ただそう言っていた。
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