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病院に入院して数日。
食事も喉を通らない俺たちには、点滴が射たれていた。
それでも兄貴と姉貴は、間で横たわる俺に、微笑みかけてくれていた。
俺にはソレが嬉しかった。
そしてあの日、彼が来た。
黒基調の制服。肩まで伸びた銀髪は綺麗に整えられ、アイスブルーの瞳が輝く。
色だけが違うが、その制服は帝国軍の制服だというのはわかった。
テレビでよく映る制服の色違い。
つまり、幼い俺はレア物という認識でいた。
『初めまして。私は帝国軍、中央司令部所属のランドという者だ。この度は、こちらで排除し損ねてしまったヤツラのせいで、君たちの…』
そこで彼は言葉を途切らせ、一瞬下を向く。
『いや、すまない。思い出させてしまったな。今日、私が君たちに会いに来たのは、一つ、君たちに提案することがあってね…』
後ろに従えた部下に手で合図し、その人たちに黒いファイルを配らせた。
俺は広げてみたが、当時の俺には理解出来ない内容だった。
だが、兄貴と姉貴は息を呑み、ランドへと、今までに聞いたことの無い怒声で怒鳴っていた。
『そんな…、この子にもって…そんな…ッ!!』
『この二人はいいだろッ!? 俺だけで十分だッ!! そうだろうッ!?』
兄貴はベッドに拳を強く叩き付け、姉貴は大きな声を上げて泣き出した。
なぜ二人がそうなったのかは、まだわからなかった。
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