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「ヒック……ヒック……」
先程は収まっていた涙は、私と二人っきりになったことで涙腺が緩んでしまったらしく、とめどなく流れている。
ひとまず落ち着くまで待った方が良いよね……
私は辺りを見渡し、空いているベンチに弟と腰掛ける。
「お姉ちゃん飲み物買ってくるから、此処で待っててね。」
そう一言言い残し、中庭の自販機まで飲み物を買いに行く。泣いた後は暖かくて甘いものだよね……ココアが良いかなぁ…。
やたら品揃えが良い自販機の前で悩みながら、弟にはココアを、自分には濃厚!!ナタデココとヨーグルトの見事な調和が乳酸菌を呼び起こす……(以下略)とかいう乳酸菌飲料(たぶん)を買った。
飲み物を両手に持って帰ると、弟はだいぶ落ち着いてきている様子。
「ほら、ココア。飲める?」
ココアを見せると、無言で頷き手を伸ばしてきた。
「熱いから気をつけて」
またもや無言で頷くと、プルトップをぷるぷるしながら開け、中身にふぅふぅと息をかけて冷まそうとしている。
その様子を見ていると。我が弟ながら可愛いなぁ……。とか思ってしまう。弟は普通のオッサンである父親に似た私とは違い、何でこんなオッサンについてきたと誰もが驚く程美人な母親によく似ている。
ふわふわの柔らかそうな髪に、白い肌。黒々とした大きな瞳に、可愛くちょこんとついた口。
赤ちゃんの頃からそれはもう、女の子とみまごうばかりに可愛くて、しかも甘えん坊で泣き虫な弟に私はメロメロだった。
だから……弟を虐める奴は血祭りにあげてやるぜ…ゲヘヘヘヘ……
とか心の中で変な笑い声をあげているとは露知らず、弟はゆっくりと話し始めた。
「あのね……。うさぎちゃん逃がしちゃったの……」
……
………
…………………??
うさぎちゃん??
誰??
頭の中が?マークで一杯になる。そんな姉の様子を見て、弟はより詳しく事情を説明し始めた。
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