亜理沙着地して、茸を食す

2/6
前へ
/22ページ
次へ
もう、どれくらい落ちているのだろう。 最初のうちはパニックになってしまって、周りのことを全然見ていなかったけど(まぁ普通の人なら当然だよね)、長く落ちているせいか落ち着いてきた。 ひとまず……頭からは落ちたくないかな……。 そっちの方が楽かもしれないけど、この高さならもう関係ないよね。 そう思った私は、空気中でバタバタともがき、何とか態勢を変えた。 そしてふと、違和感に気づく。 ……穴ってこんなに広かったっけ……??しかも、落ちる速度が段々緩くなってきた気が……?? 落ちた瞬間は、手足を伸ばすとぎりぎり届かないぐらいだったはずの穴の直径は、今やブラックホールですか??と言いたくなる程に端がまったく見えないぐらいに広い。 その上、何だかうっすらと明るい。光源は……えっ……?? 目を凝らすと遠くに燭台のようなものがふよふよと滞空していた。しかも沢山。 …… ………?? よし。見なかったことにしよう!! 君子危うきに近寄らず。これ以上災難に巻き込まれるのはゴメンだ。 しかし、態勢を変えることが出来たということは、上に向かってもがけば地上に戻れないだろうか?? バタバタッ!!ジタバタッ!! 乙女丸投げ(ほっとけ!!)でもがくも、全く上昇する気配はない。 速度は落ちたが、やはり落ちていくしかないようだ。 「何で速度が落ちてるのかわからないけど……これなら助かりそうな気がするなぁ……」 そもそも底があるのかさえわからないけど。 もしかして、このまま穴の中で餓死とか……?? 「うーわぁぁぁ……。それだけは嫌だなぁ……」 何よりも寝ることと食べることが好きな私にとっては、それは一番の苦痛である。 「こんなことなら……お弁当食べておけば良かった……」 私のおにぎり、私の唐揚げ、私のプチトマト、私の…… お弁当のおかず達が、頭の中に浮かんでは消えていく。 ごめんよ……。今まで君達を残したことなんてなかったのに……。 「はぁ……お腹すいたなぁ……」 いざとなれば、あの燭台でも食べるか……食べれるかな……?? 自分の顎の強度に集中していて、私は景色が変わり始めたことに気づいていなかった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加