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もう、どれくらい落ちているのだろう。
最初のうちはパニックになってしまって、周りのことを全然見ていなかったけど(まぁ普通の人なら当然だよね)、長く落ちているせいか落ち着いてきた。
ひとまず……頭からは落ちたくないかな……。
そっちの方が楽かもしれないけど、この高さならもう関係ないよね。
そう思った私は、空気中でバタバタともがき、何とか態勢を変えた。
そしてふと、違和感に気づく。
……穴ってこんなに広かったっけ……??しかも、落ちる速度が段々緩くなってきた気が……??
落ちた瞬間は、手足を伸ばすとぎりぎり届かないぐらいだったはずの穴の直径は、今やブラックホールですか??と言いたくなる程に端がまったく見えないぐらいに広い。
その上、何だかうっすらと明るい。光源は……えっ……??
目を凝らすと遠くに燭台のようなものがふよふよと滞空していた。しかも沢山。
……
………??
よし。見なかったことにしよう!!
君子危うきに近寄らず。これ以上災難に巻き込まれるのはゴメンだ。
しかし、態勢を変えることが出来たということは、上に向かってもがけば地上に戻れないだろうか??
バタバタッ!!ジタバタッ!!
乙女丸投げ(ほっとけ!!)でもがくも、全く上昇する気配はない。
速度は落ちたが、やはり落ちていくしかないようだ。
「何で速度が落ちてるのかわからないけど……これなら助かりそうな気がするなぁ……」
そもそも底があるのかさえわからないけど。
もしかして、このまま穴の中で餓死とか……??
「うーわぁぁぁ……。それだけは嫌だなぁ……」
何よりも寝ることと食べることが好きな私にとっては、それは一番の苦痛である。
「こんなことなら……お弁当食べておけば良かった……」
私のおにぎり、私の唐揚げ、私のプチトマト、私の……
お弁当のおかず達が、頭の中に浮かんでは消えていく。
ごめんよ……。今まで君達を残したことなんてなかったのに……。
「はぁ……お腹すいたなぁ……」
いざとなれば、あの燭台でも食べるか……食べれるかな……??
自分の顎の強度に集中していて、私は景色が変わり始めたことに気づいていなかった。
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