4)会うは別れの始めなり

15/30
前へ
/134ページ
次へ
 手当の最中、ジョンの容態なんて聞かされていなかったんだろう。  俺の血相を見て、まさか、と言う予感に顔が歪んでる。 「ア、レクか……」  か細い声でジョンが呟く。  震える手が上がって、招くようにかくん、と折れる。  俺はベッドサイドに駆け寄ると、その手を掴んで何度も頷いた。 「俺だよ。アレクだよ。大丈夫、すぐ治るってフェイが言ってた。すぐ手術だから麻酔痛くても我慢してよね」 「っは、麻酔、痛いのか」 「うん。超痛い。でもしないで切られるよりはましだから、我慢してね」 「そうか……」  ジョンの鳶色の瞳が宙をさまよった。  かすかに笑ってはいたんだけど、笑みを刻む唇は血の気がない。  いつもぷりぷりで血色のいいほっぺたが、紙みたいに真っ白になってる。 「ジョン……」  ジョンの手を握りしめたまま絶句する俺の背後から、グロウが声をかけた。    彷徨っていた眼差しが、グロウの方を見る。 「な、んだ……その面は」  言って、浅い呼吸を繰り返しながら、小さく笑った。 「しけた、つら、してんな……」 「そりゃ、知り合いがこんな状態になってたらいくら俺だってしけるわ」  グロウは顔を歪めるようにして笑って、冗談めかした台詞を言った。  それからベッドサイドにやってくると、俺の肩にぽん、と手を置く。 「手術したらすぐ、治る。俺の右肩を見ただろ。フェイがフェイがくれたんだぜ」 「……ふっ」  グロウの台詞に、ジョンが笑った。
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加