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手当の最中、ジョンの容態なんて聞かされていなかったんだろう。
俺の血相を見て、まさか、と言う予感に顔が歪んでる。
「ア、レクか……」
か細い声でジョンが呟く。
震える手が上がって、招くようにかくん、と折れる。
俺はベッドサイドに駆け寄ると、その手を掴んで何度も頷いた。
「俺だよ。アレクだよ。大丈夫、すぐ治るってフェイが言ってた。すぐ手術だから麻酔痛くても我慢してよね」
「っは、麻酔、痛いのか」
「うん。超痛い。でもしないで切られるよりはましだから、我慢してね」
「そうか……」
ジョンの鳶色の瞳が宙をさまよった。
かすかに笑ってはいたんだけど、笑みを刻む唇は血の気がない。
いつもぷりぷりで血色のいいほっぺたが、紙みたいに真っ白になってる。
「ジョン……」
ジョンの手を握りしめたまま絶句する俺の背後から、グロウが声をかけた。
彷徨っていた眼差しが、グロウの方を見る。
「な、んだ……その面は」
言って、浅い呼吸を繰り返しながら、小さく笑った。
「しけた、つら、してんな……」
「そりゃ、知り合いがこんな状態になってたらいくら俺だってしけるわ」
グロウは顔を歪めるようにして笑って、冗談めかした台詞を言った。
それからベッドサイドにやってくると、俺の肩にぽん、と手を置く。
「手術したらすぐ、治る。俺の右肩を見ただろ。フェイがフェイがくれたんだぜ」
「……ふっ」
グロウの台詞に、ジョンが笑った。
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