62人が本棚に入れています
本棚に追加
どうしてデザート・ウルフの面々がジョンを慕って集まるのか。
ジョンはキレると本当に怖いけど、でもそうじゃない時は頼りがいがあって懐が大きくて、本当に兄貴みたいなんだ。
そして多分ジョンも、そんなチームメイト達に、護れなかった弟の姿を重ねていた。
デザート・ウルフのチームメンバー全員が、ジョンにとっての弟だったんだ。
「俺は、ずっと、悔しかった」
言って、ジョンは再びグロウと、そして戸口に佇むジェイさんを見た。
「俺だって、チームの誰だって、望んで、こんなところに生まれたんじゃ、ない。なのに、たまたま運が悪かっただけで、生まれた家が、悪かっただけで、こんな、掃きだめを這いつくばるような生活しか、できない」
ジョンの手に、力がこもった。
傷の残る右肩を強くつかまれ、グロウが顔を歪める。
けれどグロウは決して痛みを訴える声は上げなかった。
ジョンの残そうとしている何かを受け取ろうと、真剣な眼差しで彼を見つめている。
「変えたかった。変えて、もっと、普通の、生活を、したかった」
「……わかってる」
「頼む。あいつ、らを、見捨てないでやって、くれ」
「……俺でいいのか」
「お前が、いいんだ」
そう言って、ジョンは俺達と逆のベッドサイドにいるフレッドの方を見た。
「証人は、お前だ、フレッド」
突然傾けられた言葉に、フレッドが慌てて頷く。
何度も、何度も。
「頼んだ、ぞ」
「わかった。任せろ」
重い声で、グロウが頷いた。
そして右肩に視線を軽く傾ける。
食い込むほどに握られた肩。
そこに託された何かを見て、確認したんだろう。
「アレク」
「な、なに?」
突然呼ばれて、俺はもうとっくに止まらなくなってる涙をぬぐった。
「きちんと、学校に、行けよ」
「行ってる!」
「お前が、一番、心配なんだ」
「何でだよ! てか、心配なら生きてずっとし続けてくれよ!」
「弟に、そっくりだったんだ」
俺は囁かれた言葉に、目を見開いた。
吸い込んだ息そのままに、絶句してしまう。
最初のコメントを投稿しよう!