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『――パシリにでも何に使ってくれてもいいです! だから仲間に入れてください!』
そう言って頭を下げた俺に、誰もがいぶかしげな顔をし、『なんだこのチビは』と馬鹿にした。
だけど、ジョンだけは少し驚きはしたみたいだけどニッと笑って頷いた。
『一人で乗り込んでくるとはいい度胸だ。名前は?』
『アレクサンダー・キョウスケ・タカナシ――アレクって呼んでください』
『アレク……』
その名前を聞いて、ジョンは驚いたあとに、今思えば少し複雑な表情を浮かべて俺の名前を呟いた。
『いいぜ、仲間に入れてやる』
そう言ってそれまで座っていた椅子から立ち上がると、大きな手で俺の頭をぽんと叩いた。
最初は怯えて肩をすくめた俺は、だけど叩かれる気配はないと知って、その太い腕の向こうにあるジョンの顔を見上げた。
目のあったジョンの鳶色の瞳がニッと細められた。
『今日からお前も俺の弟だ』
その言葉に、俺も目を細めて笑った。
――それはたった一年とちょっと前の話。
なのに今、ジョンはベッドに横たわったまま、俺の声に応えない。
どれだけ声を上げても、どれだけその名を呼んでも、力なくベッドに落ちたその大きな手が、俺の頭を撫でて慰めてくれることもなく――
グロウがそっと閉じたまぶたの下のその瞳が、俺を見て笑ってくれることは、なかった。
『俺の弟だ』
そう言ってくれた人との、それが別れ。
そしてこの春迎えた俺の最初の、別れ――
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