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ジョンの葬式は、デザート・ウルフのメンバーだけでやった。
アル中だという父親はジョンの弟を殺した罪の他にも麻薬所持などの罪も重なって服役中で、男と逃げたという母親の行方を知ることもできなかったからだ。
そういう意味で、ジョンにとっての家族は本当にデザート・ウルフのメンバーしかいなかったんだろう。
スラムにある教会の神父に頼んでジョンに祈りを捧げて貰って、墓地だけはきちんとした場所に埋めてあげた。
父親の暴力の犠牲になってなくなったという弟さんの側だ。
葬送の儀式が全て終わった後、俺は少しだけ取っておいた花を、もう誰も見舞うことのなくなってしまった弟さんのお墓にもおいてあげたんだけど、そこに刻まれた名前を見て、俺は声を上げてしまった。
【Alexander Maldini】
ああ、そうか。
俺が名乗った時のあのリアクション。
名前まで同じだったから、驚いてたんだな。
そう思ったら涙が溢れてきてしまって、俺は弟さんのお墓の前でうずくまってまた、泣いた。
「……アレク」
そんな俺の背に、声がかかる。
「そろそろ戻るぞ」
そういうのは、黒い喪服を身につけたジェイさんだった。 喪服と言ったってみんながきちんとしたもの持っているわけじゃない。
手持ちの中で、なるべく黒っぽい服を着ていたんだ。
だからジェイさんも、黒いパンツにタートルネックの黒い長袖のシャツ、という出で立ちだった。
「……うん」
俺はシャツの袖で涙をぬぐって立ち上がると、彼の隣に並んだ。
「アジトに戻るの?」
そう問いかけると、ジェイさんは少し難しい顔で首を横に振った。
「その前に少し話したいことがある。フェイの家に行こう」
告げたジェイさんを俺はまぶしいものを見るように目を細めながら見上げた。
その日は、神様がジョンの旅立ちをせめて華やかにしようとしてくれたのか雲一つない快晴で、そんな陽の光の下でジェイさんの金髪を見るのは久しぶりだった。
カルフォルニアの乾いた青い空を背景に、薄い金髪がきらきらと揺れている。
「グロウ!」
ジェイさんは墓地の出口にいたグロウにも声をかけた。
どうやらすでにグロウとはフェイの家に行くという話はついているらしくて、グロウはメンバーに一言二言告げるとそのままこちらに合流した。
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