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「俺は、ここを出て行こうと思う」
その言葉にグロウが驚いた顔でジェイさんを振り返った。
「出て行くってどういうことだよ?」
「そのままの意味だ。SKID ROWを離れて、ロサンゼルスも出る」
「デザート・ウルフはどうするんだ」
「それはお前が任されたものだ。お前が引き継いでいけばいい」
「ふざ……」
「グロウ!」
血が上りそうになったグロウを、俺は慌てていさめた。
グロウは舌打ちをして、浮かせた腰を再びソファに下ろす。
「――とりあえず最後まで聞く」
そして不服そうでもそう言ったので、ジェイさんは苦笑を浮かべた。
軽く俺の方へも視線を向けたのだけれど、特に何か告げるわけでもなくそのまま話を続ける。
「今回の襲撃は、明らかに俺達を狙ったものだ。それはわかってるか?」
ジェイさんが言うと、グロウは渋い顔で頷いた。
いや、渋いというより、こみ上げる怒りを必死に抑えているような感じだった。
「ジョンとフレッド二人が撃たれたのがその証拠だ。犯人はずっと、Liberty Hillを襲撃した際殺し損ねた二人組を探していた――金髪と、赤髪の二人の男の行方をな」
「ちょっと待て」
その言葉に、グロウが目を見開いてジェイさんを見た。
「俺達を狙った流れ弾がたまたま当たったんじゃないのか?」
「明らかに照準を二人に絞ってただろうが。それに俺達を狙うってどうやってだ? 俺とお前は完全に髪の色と人相を隠していたんだぞ」
ジェイさんの指摘に、グロウが沈黙する。
「あのLiberty Hillの襲撃でも俺達の人相をはっきりととらえるのは難しかっただろう。お前は後ろから撃たれたわけだし、俺だって伏せながらお前に駆け寄った。なにより銃撃戦だったからな。顔を確認する余裕はあちらにだってなかったはずだ」
「――ねえ」
俺は、俺を完全に置き去りにして進む会話に苛立って声を上げた。
俺を呼んだんだったら、話に巻き込む気があるのなら、きちんと話してほしい。
そう告げると、初めて気づいた、というようにジェイさんが目を見開いて、それから一つ、謝った。
そんなことを失念するなんて、彼にしては珍しいことだった。
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