4)会うは別れの始めなり

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「最初から、話そうか」  そう言って彼は、ぽつりぽつりと話し始めた。  ジェイさんとグロウが育ったLiberty Hillという孤児院があったこと。  そこが襲撃を受け、ジェイさん達が帰宅した時には彼ら以外の子供達みんな殺されていたこと。  駆け込んだグロウはそのまま狙い撃ちにされ、肩を撃たれたこと。  ジェイさんが護身用に持っていた銃で何とか応戦し、傷を負ったグロウを担いで逃げ――そうしてスラムに流れ着いたこと。 「Liberty Hillはそのあと火をかけられて跡形もなくなったと聞いた。そこの院長だったジジィも行方不明。というか連絡手段がない。だから俺達は何故襲われたのかも、相手が誰なのかもわからないんだ」 「……ジェイさんは犯人はジェイさんを狙ってるんだって思ってるんでしょ? それは、何故?」  俺が問うと、ジェイさんは苦笑した。  でももう踏ん切ったらしい。  ここまできたらすべて話すつもりは元々あったらしく、苦い顔ではあったけれど話してくれた。 「それからさらに七年前、俺の生家もまた、火にかけられた。祖父が殺され、両親は行方不明。犯人はわかってない」  かすかに息を呑んだ俺を、アイス・グリーンの眼差しで静かに見上げたまま、ジェイさんは続ける。 「相手からしたら、背中をぶった切って火にくべたはずの子供だ。でも七年経ってそれが生きていたことを知って、殺しに来たんじゃないか――そう思っていたんだ」 「背中?」 「ここにな」  そう言って、ジェイさんは背中を人差し指で差し手、軽く斜めに動かした。 「傷が残ってる。ナイフでざっくりだ。まあ生き残ったのは運が良かったんだな」 「俺はその考えには異論があるけどな」  不意にグロウが言って、ぐり、と首を巡らせた。 「あの院長のじいさんだってなんかまともじゃなかったから。あのじいさんがなんか恨み買ってってのも可能性としてあるだろ」 「気づいてたのか?」 「気づかないでか。あんな怪しいじいさんいないぜ。一度も勝てなかったし」 「お前それ完全に個人的恨みじゃないか」 「いんだよ。だから、とにかく、お前一人の責任じゃないかもってことが言いたいんだ、俺は」  そう告げて、つり目がちな目をナイフのように鋭くしてジェイさんを睨んだ。
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