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「そしてジョンが残したもの。ジョンが護ってきたもの。それを全て引き継いで、戦う覚悟は、ある?」
俺の問いかけに、グロウは眼差しを厳しくした。
まるで睨み合うように、俺達はしばし視線を交わす。
「その覚悟があるからあの時、俺はジョンの言葉に頷いた。俺はあのチームを護る」
グロウの迷いのない眼差しに、俺は覚悟を見てその手を離した。
立ち上がり、ジェイさんの方を見る。
つられるようにグロウも視線をジェイさんの方にやり、そうして、問うた。
「それで、お前はどうするんだよ、ジェイ」
「……だから言ってる。ここを離れる」
静かな声でジェイさんは言った。
「たとえLiberty Hillの襲撃や今回の襲撃の原因がなんだったとしても、俺とお前が一緒にいるのは良くない。それは今回よくわかった」
告げて、再びジェイさんはグロウを見つめる。
「お前が覚悟を決めてここに残るというんなら、俺がここを出る。闇に身を沈めて、やつらに見つからないように」
「独りでか」
「ああ、独りで」
答えるジェイさんの声に迷いはなかった。
もうすでに覚悟は決めたのだと知れる声だった。
「でも俺は、諦めるわけじゃない。俺は俺の戦いを続ける。行方不明の父さんや母さんも探し続けようと思う」
「独りでどうやってだ」
「組織は作ろうと思う。だけど探す手がかりは、あるんだ」
そう言ってジェイさんは右手を軽く持ち上げて見せた。
その小指には華奢なデザインのリングがはめられている。
いくら男性にしては綺麗な手をしている方でも、明らかに彼の指には小さく繊細すぎるデザインのその指輪を、俺はまじまじと見つめた。
宝石のことはあまり詳しくない。でもそこにはまってる真っ赤な石は多分ルビーで、それも相当質のいい石なように見えた。
「この指輪の作成者はヨーロッパにいるらしい。この裏に刻まれた文字の秘密を知っているかもしれない」
ジェイさんの言葉に、俺はグロウを見た。
グロウはその指輪のことも、文字のことも知っているみたいで、「そうか」と小さく呟いたっきりだった。
だから俺は、グロウがその意味を知っているなら、後で聞けばいいとまた、ジェイさんの話に耳を傾けた。
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