4)会うは別れの始めなり

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「それに、俺のルーツはヨーロッパにある。見ておくのもいいと思うんだ。だから、ちょうどいいんだよ」  ジェイさんは重くなった空気を紛らわせるように、努めて明るい声で言った。  ――その言葉の何割かは本音なんだろう。  でも大部分が強がりなんだって、俺にはわかった。  だってどんなに頭が良くたって、十八なんだよ。  それまで普通にハイスクールに行って、普通の学生だった十八歳なんだよ。  それを思ったら俺には、目の前にいる人がすごい人でもなんでもなく、ただの普通の少年に見えた。 「……だったら、俺もついて行く」  そのせいかな。  気づいたらそう呟いていた。  俺の言葉に、ジェイさんが驚いたような眼差しを向けてくる。 「グロウは仲間が一杯いるのに、ジェイさん一人なんて不公平だろ。だから、俺も行く」  なんかひどく子供くさい言葉しか出てこなくて、だんだん視線が落ちてしまう。  でも、この人を一人にしたくないと思ったから。  言葉をつなげる。 「俺も連れてってよ、ヨーロッパ」 「………―――馬鹿」  ジェイさんは、顔を歪めて呟いた。  笑おうとして、笑えなかった、そんな顔だった。 「ジョンと約束したんだろ。学校行くって。親父さんともうまくやっていくって」 「そう、だけど……でも!」 「ありがとう」  そう言って、立ち上がったジェイさんは俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。 「気持ちだけ、受け取っておく」  びっくりするくらい優しいその手に、気づいたら、目頭から盛り上がったもので視界がぐにゃぐにゃに歪んでいた。  泣くなんて子供くさい。  そう思うけど、止まらなかった。 「それに、俺がいなくなった時にこの馬鹿の暴走を留められるのは、アレクくらいだろ」  そう告げたジェイさんは、視線をおそらくグロウに当ててるんだろう。  でも俺は顔を上げてそれを確認することはできなかった。  しゃくり上げる嗚咽をこらえるだけで精一杯だったから。
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